25 腸内細菌がヒトを健康にする仕組みレビュー 【その4:生理活性脂質】(GUT, 2022年2月publish)

その3では細菌由来のポリ多糖がヒトの炎症作用を活性化することについて学びました。今回は生理活性脂質(bioactive lipid)と腸内細菌の関係についてみていきます。これまで細菌由来の化合物の話でしたが、その4ではヒト由来の化合物がどのように腸内細菌に影響するか見ていきます!

今回の論文

【論文タイトル】Gut microbiome and health: mechanistic insights

【著者】Willem M de Vos et al.

【年】2022

【ジャーナル】GUT

【リンク】Gut microbiome and health: mechanistic insights | Gut (bmj.com)

生理活性脂質

de Vos et al. 2022の論文では2種類の生理活性脂質が紹介されているので、これらについてまとめます。

1. エンドカンナビノイドシステム (eCB: endocannabinoid system)

‎eCBシグナル伝達システムは、エネルギー、グルコース、脂質代謝の調節に加え、免疫、炎症、そして最近では微生物叢と宿主の相互作用においても重要な役割を果たしていると言われています。

eCBの認識には受容体CB1 (cannabinoid receptor type 1) やCB2 (cannabinoid receptor type 2) などが用いられます。‎どちらの受容体もGタンパク質共役受容体‎ (GPR) であり、共通のシグナル伝達メカニズムを共有しています。‎さらに、eCBの受容体としてPPARα、PPARγ、GPR55、transient receptor potential vanilloid type-1 (TRPV1) なども用いられていることが次々に明らかとなりました。

さて、そんなeCBシグナル伝達ですが、腸管バリアの調節において主要な役割を担っているということがここ10年くらいで明らかになりました。これが最初に判明するきっかけとなったのは、肥満・糖尿病患者で腸管eCBが変化し、腸管透過性を誘発する生理活性脂質であるAEAが増加する現象が見つかったことにありました。さらに、この変化が腸内細菌叢の変化と関係していることが明らかとなったのです。ほかの研究においても、遺伝的肥満マウスおよび糖尿病マウス(ob/obおよびdb/db)の両方が、全身組織代謝およびeCBシステムの変化と相関する腸内細菌叢組成の大きな変化が示されました。

これらのデータを総合すると、eCBに属する特定の生理活性脂質と腸内細菌叢、脂肪組織の発達および腸の機能との間に関連があることが強く示唆されます。(四角関係ということですかね・・・)

メカニズムも少しずつ解明されており、eCBシステムは生理活性脂質の産生を介して腸内細菌叢と反応し合い、NAEの主要合成酵素であるNAPE-PLD(N-アシルホスファチジルエタノールアミン加水分解特異的ホスホリパーゼD)の調節異常が代謝性合併症につながることが示唆されています。

2. 胆汁酸 (BA: Bile acid)

コール酸(CA)やチェノデオキシコール酸(CDCA)などのBAsは、肝臓でコレステロールから合成される両親媒性分子です。グリシンやタウリンに抱合されてから、胆汁に分泌されて胆嚢に蓄積します。BAは、食物が摂取されると小腸に放出され食餌性脂肪の消化吸収を補助します。腸内のBAの約95%は回腸で再吸収され、肝臓に戻され再分泌されています。この腸肝循環は1日に数回行われ、高血糖、脂質異常、肥満を防ぐために全身のグルコース、脂質、エネルギーの恒常性を維持し、消化器系および循環器系の炎症性代謝疾患から保護しています。これらのBAは最終的には、受動的に循環に再吸収されるか排泄されます。

BAの主な機能は、コレステロール、トリグリセリドおよび脂溶性ビタミンの消化吸収を調節することですが、最近、BAがシグナル伝達分子として内分泌機能を示すと言われています。さらに、BAsはいくつかの受容体を活性化することにより、上皮細胞の増殖、遺伝子発現、脂質、グルコースおよびエネルギー代謝を調節しています。これらの受容体は、肝臓、腸、筋肉、褐色脂肪組織、中枢・末梢神経系など多数の組織に存在し、シグナル伝達カスケードを仲介して、BA、脂質、糖質の代謝やエネルギー消費、炎症に関わる遺伝子の発現を活性化しています。

さて、腸内細菌とBAがどのように関わっているかというと、腸管内のいたるところで一次BAが腸内細菌により修飾されています。この修飾には、胆汁酸ヒドロラーゼ(BSH)活性による脱共役(アミノ酸残基の除去)、水酸基の除去(脱水素化)、酸化(脱水素化)、エピメリゼーションによるさらなる代謝があり、結果としてデオキシコール酸、リトコール酸、ウルソデオキシコール酸といった二次BAを形成しています。

BAのような重要なシグナル伝達物質が、腸内細菌叢によって化学的に変換されるのは非常に面白いですね。この特性ゆえに、BAは微生物叢由来のシグナル伝達代謝物とみなすされることもあります。

興味深いことに、BAは食物摂取後に放出され、腸管に沿って異なる微生物群集に遭遇するという時空間的パターンが認識されています。(色んな腸内ニッチにいる細菌によってBAが修飾されるということですね!!)

BA修飾のひとつであるBSH活性が系統学的に異なる多くの小腸由来の細菌によって行われる一方、他のBA修飾反応は腸から遠い、より特殊な細菌種によって行われると考えられています。

最近の百寿者を対象とした研究では、百寿者は独自の二次BAを生産する可能性を示唆しました。

腸内細菌叢でBAを操作することで、特定の疾患の治療に生かせるかもしれませんね。

【腸内細菌がヒトを健康にする仕組みレビュー その1~7】はこちらからどうぞ!

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