28 腸内細菌がヒトを健康にする仕組みレビュー 【その7:新たに発見された分子とヒトへの効果】(GUT, 2022年2月publish)

これまで腸内細菌とヒトの健康に関するレビューをじっくり読んできましたがついに最後!

最後は、最近明らかになったヒトと腸内細菌が関連する分子について読んでいきます。

今回の論文

【論文タイトル】Gut microbiome and health: mechanistic insights

【著者】Willem M de Vos et al.

【年】2022

【ジャーナル】GUT

【リンク】Gut microbiome and health: mechanistic insights | Gut (bmj.com)

エンテロイシン

ここ最近「エンテロイシン」と呼ばれるクラスの分子が注目されているそうです。エンテロイシンとは、腸管神経系(ENS)を標的として十二指腸の収縮を調節する機能を有する腸由来分子のことです。エンテロイシンは、化学的に多様で、ホルモン、生理活性ペプチド/脂質、栄養素、微生物叢、免疫因子と関連している可能性があります。

エンテロイシンの概念は、T2D患者において十二指腸の運動機能亢進がグルコースの吸収を促進し高血糖を引き起こした現象が観察されて以来、登場しました。十二指腸の収縮は視床下部によって感知され、糖尿病時には十二指腸の運動亢進が脳への異常な求心性神経メッセージを作り出すことが証明されており、逆に、ENSニューロンに作用して十二指腸収縮を自然に回復させると腸-脳軸が回復してインスリン感受性が改善されるそうです。あまり論文中で詳しく書かれていませんでしたが、エンテロイシンの一部は腸内細菌由来だそうです。

12-HETE

糖代謝に関わる新規の腸内分子や受容体を求めて腸内細菌叢を変化させ糖尿病を改善する特定の分子の調査が始まりました。例えば、オリゴフルクトースの投与により、腸管神経細胞の活動を制御して十二指腸収縮頻度を減少しました。リピドミクス解析により、このオリゴフルクトース摂取により、大腸細胞内の腸管生理活性脂質(12-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(12-HETE))の存在量が選択的に増加することが明らかとなりました。糖尿病マウスにこの12-HETEを投与すると、糖代謝が改善されました。12-HETEの効果は、生体外でも確認されました。さらに、この生理活性脂質が十二指腸の収縮力に作用する分子メカニズムは、ミューオピオイド受容体(MOR)(エンケファリンによって活性化される)およびPPARγの存在に依存していることが判明しました。さらに、前臨床試験によって、糖尿病患者の十二指腸において健常者と比較して12-HETEレベルが低下し、プロエンケファリンおよびMORの発現が減少していることが示されました。

C18-3OH

大腸炎治療用プロバイオティクスとして知られている大腸菌Nissle 1917(EcN)の質量分析で、本菌投与群で3-hydroxyoctadecaenoic acid(C18-3OH)濃度が上昇していることを発見されました。さらに、C18-3OHを経口投与すると大腸炎が減少したのです。先行研究では、オリゴフルクトースの抗炎症作用が大腸のC18-3OH濃度の上昇し、C18-3OHがPPARγを活性化することが示されています。

AGEs

AGEs (advanced glycation end product) は、食品中に生成されるメイラード反応生成物であり、熱処理によってタンパク質やアミノ酸の遊離アミノ基が還元性糖鎖と反応し、生物学的利用能が低くなったものを指します。AGEsの受容体の活性化による炎症反応の促進、腸管透過性の上昇(AGEsと大腸上皮の相互作用の増大)、その結果としての全身循環への細菌毒素の流出などがAGEsとT2DやCRCに関連しているとされています。フルクトセリンとはリジンとグルコースから生成するAmadori生成物で、主な食事性AGEsの一つ です。大腸菌はフルクトースエリシンを呼吸する能力を持つことが以前から知られていましたが、最近の研究ではIntestinimonas属の細菌が新規経路でフルクトースエリシンを酪酸に変換することが明らかになりました。フルクトースエリシンの分解能力は粉ミルクを与えられている乳児にのみ認められ、母乳育児児には認められませんでした。これは、熱処理後の粉ミルクにこの化合物が多く含まれていることと関係があるかもしれません。最近の研究では、もう一つの主要なAGEであるN-ε-カルボキシメチ ルリジンをCloacibacillus属やOscillibacter属が完全に利用するこ とも報告されています。

TMAO

TMAO (trimethylamine N-oxide) は、野菜、果物、肉、魚介類によく含まれ、細菌の浸透保護剤として知られるベタイン、コリン、L-カルニチンなどの第四級アミンの摂取に関連しています。いくつかの Proteobacteriaを含む腸内細菌は、TMA リアーゼとその活性化酵素 (CutCD) を通じてこれらの第四級アンモニウムイオンをアセトアルデヒドとトリメチルアミン(TMA)に変換することが可能です。TMAは血流に乗り、肝臓のフラビンモノオキシゲナーゼでTMAOに変換されます。最近の研究では、血清中のTMAOが動脈硬化および心血管リスクと強く関連していることが示されています。

IMP

腸内細菌がヒスチジンからIMP (imidazole propionate) を産生し、mammalian target of rapamycin complex 1依存性の経路を通じてインスリンシグナルと耐糖能に障害を与えることが明らかになっています。Streptococcus mutansとEggerthella lentaという関連のない2つの細菌がIMP生産者として特定されており、多くの代謝物が系統関係のない複数の腸内細菌群によって生産されています。これらの例から、望ましくない化合物の生成にもまた、腸内細菌が関与していることがわかっていますが、これらを無毒化し、さらには酪酸のような有益なシグナル伝達能を持つ生成物に変換する新しい嫌気性細菌も同定されています。

感想

いろいろ見てきましたが、関連性が強く示唆されている化合物も多いのですね。

ヒトにとって都合の悪い物質・よい物質の両方に腸内細菌叢が関わっているようなのですが、

私たちがこの関係性をしっかり理解してコントロールできる日が来ればよいなと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

【腸内細菌がヒトを健康にする仕組みレビュー その1~7】はこちらからどうぞ!

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