32 乳酸菌Lactobacillus acidophilusが認知能力を増強する
よく聞くgut-brain axisに関する最新研究が出ていました。今回の論文によるとLactobacillus acidophilusが認知能力に良い効果を及ぼすとのことです。さっそく見ていきます!
今回の論文
【論文タイトル】Positive Effect of Lactobacillus acidophilus EG004 on cognitive ability of Healthy Mice by Fecal Microbiome Analysis Using Full-Length 16S-23S rRNA Metagenome Sequencing
【著者】Jeon et al.
【年】2022
【ジャーナル】Applied and Industrial Microbiology
【リンク】Positive Effect of Lactobacillus acidophilus EG004 on Cognitive Ability of Healthy Mice by Fecal Microbiome Analysis Using Full-Length 16S-23S rRNA Metagenome Sequencing | Microbiology Spectrum (asm.org)
L. acidophilus EG004を飲むと認知機能が上がるかも
この研究では、認知能力に対して腸内のプロバイオティクスがどのような影響を及ぼすかを調査するために、L. acidophilus EG004、L. paracasei EG005、およびL. rhamnosus EG006を単離して2か月マウスの飲水に混ぜて経口摂取させました。
そして、1か月経過後から認知能力を測るためのテスト (Spontaneous alternation (SA)、novel object recognition test (NOR test)、passive avoidance task (PAT)など)を行いました。その結果、プロバイオティクスを投与した群では認知機能が向上しており、L. acidophilusで投与群で最も認知能力が上昇しているとする結果が得られました。
腸内細菌叢の変化
L. acidophilus EG004を飲むと、Firmicutesやproteobacteriaが増えることが明らかとなりました。
L. acidophilus群で増加した属はLactobacillus, Staphylococcus_A, Escherichiaで、減少した属はBacteroides_F, Desulfotomaculum, Lachnobacterium, Bittarella, Agathobacter, Roseburia, Bariatricus, Lachnospirareaでした。種レベルでは、Muribaculum intestinaleが最も多く、両群で50%以上を占めていることが判明しました。M. intestinaleに続いて、L. acidophilus群ではLactobacillus acidophilus、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus_B murinus、Lactobacillus_H reuteri種が多く、コントロール(水)群ではLactobacillus_B murinus、Bacteroides_B vulgatus、Faecalibaculum rodentium、Kineothrix alysoides種の割合が高いことが明らかとなりました。
HPLCで3種菌の培養液の組成を測ったところ、乳酸はL. paracasei EG005で最も高い濃度で確認され、酢酸はL. acidophilus EG004の培養液に最も高い濃度で含まれていまいした。
L. acidophilus EG004株が生産する酪酸や酢酸などのshort chain fatty acidsは神経伝達物質や神経栄養因子を調節することができるので、L. acidophilus EG004株の投与によって同株が腸内で増加し、酪酸量が増加したことが認知能力の向上につながった可能性があります。