1 真核生物に近い原核生物の発見
今回の論文はこちら!
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1916-6
【タイトル】Isolation of an archaeon at the prokaryote–eukaryote interface
【著者】Imachi et. al.
【年】January 2020
【ジャーナル】Nature
タイトルまんまですが「原核生物と真核生物の境界のアーキアを分離」した論文です。
これはね・・・とんでもないことですよ!
真核生物の起源は「アスガルド古細菌」と呼ばれる系統群であると言われ、このアスガルド古細菌は真核生物と類似したゲノム特性を有します。(真核生物にのみ見られる、タンパク質レパートリーを持っている)
しかし、微生物のほとんどは難培養であり、分離可能なものは1%にも満たないと言われています。アスガルド古細菌も同様に分離例がなく、その生態や生理に関する知見がありませんでした。
ところが、この論文では10年もの月日を費やして、深海からこの古細菌を分離したと言うではありませんか!
著者らは、深海堆積物中の微生物を独自のバイオリアクターで2,000日以上培養し、集積しました。分離した菌の名は ’Candidatus Prometheoarchaeum syntrophicum’ MK-D1株。
この菌は嫌気性の小さい球菌だそうで、メタン生成菌と共生してアミノ酸などを分解し、生合成とエネルギー生産を行うようです。
非常に増殖が遅いために、分離に10年間という歳月を要したそう。
培養開始まで30~60日+最大密度に達するまで3か月なんて・・・よく培養し続けようと思いましたよね。
アスガルド古細菌は真核生物特有なオルガネラなどを保持する可能性があると考えられていましたが、本菌はオルガネラを有していませんでした。
その代わり、菌体外に複雑な突起を伸ばしているようです。
著者らはこの発見により、原核生物が真核生物に分岐する新しい進化モデル「entangle-engulf-endogenize (E3)」を提唱しました。
硫酸還元菌などと共生関係にあったアスガルド古細菌が、地球上に酸素が登場することによって好気性菌(のちのミトコンドリア)とも共生関係を結び、現在の真核生物に進化するという仮説です。
国立研究開発法人「JAMSTEC」で行われた研究のようですね。
今後の分離や発見で、この仮説がどうサポートされていくか注目です!