12 地殻に棲む微生物の物質リサイクル式生存法

【論文タイトル】Recycling and metabolic flexibility dictate life in the lower oceanic crust

【著者】Li et. al.

【年】January 2020

【ジャーナル】Nature

【リンク】

Recycling and metabolic flexibility dictate life in the lower oceanic crust | Nature

極限環境生物をご存知ですか?

普通なら生物が住めないような極限の環境に生息する生物を指します。

極限環境は、例えば、ものすごく熱いとか寒いとか、高圧だとか乾燥してるだとかいう環境ですね。

ネイチャー誌のこちら(↓)のニュース記事に極限環境生物のことが簡単にまとめられていたのですが、なんと全微生物のうち~70%が極限環境に生息しているそうです!

These microbial communities have learned to live at Earth’s most extreme reaches (nature.com)

ちょっと疑いたくなるくらいですね、おどろきです。

ここまでくると、本当に生物にとって「極限」の環境なのか?という疑問すらわいてきます。

むしろ、その微生物にとっては、ヒト含む動物が暮らす環境のほうが極限かもしれません。

と、私はこのような環境に生息する微生物に興味深々なわけですが、

今回の論文はネイチャー誌からで、

海底の「地殻」に棲む微生物の調査報告になります。

地殻には生物にとって重要な炭素源やエネルギー源がなさそうですが、

ほんとうに地殻にまで生物がいるんでしょうか?

では、見ていきましょう!

筆者らは、インド洋の南西インド洋海嶺において、水深700 mの位置にある地殻をさらに800 m採掘しました。

そして、回収した地殻サンプルに存在する微生物や物質を、深度ごとに調査しました。

筆者らが乗船した船には実験設備があるらしく、ATP量などは船上で即座に計測したそうです。

(船の上で実験するのって酔わないんですかね?笑)

ほかにも、細胞数、顕微鏡観察、細胞外酵素活性、C量、H量、N量、S量 (CHNS) や微生物の生存率、一部微生物の活性、RNA量を調べたそうです。さらには、サンプル中の岩石の解析、マーカー遺伝子による原核生物の多様性解析も行ったそう。

ものすごい仕事量ですね。

ここまでしたから、ネイチャーに載ったんでしょうか。

結果、地殻には微生物が生存していたそうです!

しかし、やはり細胞数は少なく(2000 cells/cm3)、 微生物は地殻のなかでバラバラに生息していたようです。

地殻に存在するmRNAを調査したところ、

予想外なことに、従属栄養的なプロセスに必要な遺伝子がとれたようです。

これらの遺伝子から推測するに、

どうやらインド洋の地殻に棲む微生物は、

ポリヒドロキシアルカン酸などを炭素源として利用し、アミノ酸を再利用することでエネルギー源としているようでした。

β-oxidationでアセチルCoAをつくり、TCA回路でアセチルCoAを消費してエネルギーをつくっていることも示唆されました。

ほかにも間隙水にふくまれる栄養も利用しているとか。

地殻では、原料からできる生産物をまた原料にする、物質のリサイクルが発達しているようですね!

栄養源の少ない環境で編み出された技です。

地殻に生存する微生物は、少ない栄養源でゆーっくり増えたり細胞を維持しているようですね。

どんな環境にも微生物は適応して、進化しています。

またそのシステムが手が出せないくらい完璧だったりするんですよね。

生物学は奥が深いです。

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