6 腸内細菌にとって繊毛の役割とは?
【論文タイトル】Bridging Bacteria and the Gut: Functional Aspects of Type IV Pili
【著者】Ligthart et. al.
【年】March 2020
【ジャーナル】Trends in Microbiology
今回は腸内細菌における「繊毛 (Type IV pili)」についてのレビュー論文を紹介します!
微生物にとって、繊毛は環境と相互作用するためのとても重要なアイテムです。
とくに環境変化の大きい腸内においては、繊毛の役割が重要だそうです。
その機能としては、
- 運動 (twitching motility)
- 付着
- バイオフィルム形成
- DNA 取込み
- 分泌
などが挙げられます。
それぞれ詳しく見ていくと・・・
- 運動性があることで、微生物が新たなニッチに生息するために役立つ
- 付着は、微生物が環境中のえさを見つけることに役立つ。また、病原菌などにとっては、宿主への付着を感知して転写応答する
- また微生物同士が大量に付着すると、厚い細胞外マトリクスを有するバイオフィルムになる。これは、病原菌や寄生菌からその微生物を守ったり、栄養交換や水平伝播を促進したりする効果がある
- DNAの取り込みは、遺伝的多様性を上げたり、耐性遺伝子を取り込み環境に適応したりするのに役立ちます。この現象は「接合 (conjugation)」、「形質導入 (transduction)」、「自然形質転換 (natural transformation)」と呼ばれる
- 微生物は繊毛を通してタンパク質を分泌したりします。Type II secretion system (T2SS) が有名。分泌する物質の例としては、付着物質、プロテアーゼ、毒素、短鎖脂肪酸などのタンパク質が挙げられますが、どれも微生物が外部環境に対してアプローチするために大切。
このように、繊毛には微生物にとって重要な機能がたくさんあるんですね。
実際に、腸内細菌のうち約30 ~ 45 % もの微生物が繊毛を有するそうです!
本論文では、他にも繊毛の構造が紹介されていたので気になる方はご一読ください。
↓
【引用】
https://www.cell.com/trends/microbiology/fulltext/S0966-842X(20)30027-5