3 細菌における自然形質転換の役割
【論文タイトル】Bacterial Transformation Buffers Environmental Fluctuations through the Reversible Integration of Mobile Genetic Elements
【著者】Carvalho et. al.
【年】March 2020
【ジャーナル】mBio
「自然形質転換」ってご存知ですか?
多くの細菌は、自然形質転換によって環境中のDNAを取り込みます。
自然形質転換の機能は細菌のコアゲノムにコードされており、細菌にとって重要な役割を担うと考えられてきました。
これまでは自然形質転換が行われる理由として
1)細菌ゲノムの遺伝的多様性を上げること
2)細菌ゲノムからMGEs (mobile genetic elements) を追い出すこと
が挙げられてきました。
この1)と2)の相反する仮説は一体どちらが正しいのでしょうか?
本論文によると、それはどちらも正しいようです。
自然形質転換によってMGEsを取り込むのは複製コストなどの面で細菌にとって負担である一方で、MGEsに保存された耐性遺伝子などが負荷の大きい環境で役立つこともあります。
本論文で行われた計算シミュレーションによると、中程度の自然形質転換を行う細菌が最も環境への適応度が高かったようです。
自然形質転換はバランスよくMGEsを取り込んだり追い出したりすることで、細菌は自らのゲノムを長期的に守り、環境に適応していたようです。
生物ってうまくできていますね。
“3 細菌における自然形質転換の役割” への1件の返信