15 オミックス解析とがんバイオマーカー探索
今回はnature portfolioにて目についた広告記事を紹介します。
日本の製薬企業タケダがプロデュースしている記事になります。
https://www.nature.com/articles/d42473-021-00470-3
バイオマーカー研究のトレンドをみていきましょう😊
がんのバイオマーカーはほとんど無い
バイオマーカーとは、薬理学ではヒトが病気になった際に血中などで発現されるタンパク質などの物質を指します。
私たちは疾患特異的なバイオマーカーを測定することで、病気を早期に発見したり病気の進行度を知ることができます。
特にがんは現在最も死者数の多い病気であるため、多くの研究者が必死になってがんを予測・診断するためのバイオマーカーを探してます。
しかしながら、がんの種類が多様であることに加え、がんに患者さんの状態も一人一人違っているため、万人に共通のバイオマーカーを見つけることは非常に難しく、がんのバイオマーカーはほとんど見つかっていないそうです。
遺伝子マーカーの次にくるのは?
ここ数年、次世代シーケンサーの普及もあり、遺伝子マーカーが注目されてきました。
特定の遺伝子変異が疾患の目印となるのです。
たとえば、HER2突然変異性の乳がんを有する患者さんは、HER2タンパク質を標的とする薬で治療が可能であることが知られています。
しかしながら、がんが特定の遺伝子に変異をもたらすケースは少なく(あるいは見つけるのが非常に難しいため)、HER2のように患者さんの遺伝子型でがんの診断ができる例はほとんどありません。
そこで研究者が注目し始めたのが、
プロテオミクス、リピドミクス、メタボロミクス といったオミックス解析だったのです。
要するに、どういう化合物が疾患と関連しているか調べようというムーブがきたのです。
オミックス解析で診断を行うメリット
ELISAのように特定のタンパク質と1対1の関係である抗体を使用する必要がなく、
すべてのたんぱく質・化学物質のデータを回収するためバイアスなしで検体を解析することができるそうです。
また、一人一人の化合物プロファイルをとるので、テラーメイドの治療が可能なのかなとも思います。
記事の最後では、タケダではそれらしいバイオマーカーが見つかったと仄めかしています。
所感
ビッグデータをとればデータは大量に出てきそうなので、これまで見逃されていた化合物と疾患の関係をとらえられる可能性もあるのかなーと思います。
ただ、刻一刻と変化するヒト中における化学物質組成やタンパク質組成を、ある時点で切り取って議論するのはやはりなかなか難しいでしょう。ここは優秀な研究者の方々に期待です!
また、プロテオミクス、メタボロミクスといったオミックス解析を個々人でやるのはけっこう時間とお金がかかりそうだな・・・とw
遺伝子治療が流行ってきている昨今、時間とお金をかかってもOK!という人はいるかもしれませんが、疾患の治療ではなく「診断」のために高額支払う患者さんはどのくらいいるのでしょう。
あと、研究目的でのオミックス解析は現象を「示唆」することしかできない場合が多いので、オミックス解析でスクリーニングしたとして、エビデンスは別でとるしかない気がしますね
いろいろ書きましたが、オミックス解析で診断ができるようになれば、同時にたくさんの疾患を検査できるようになるのは良いですよね!がんやその他疾患が血液や尿をとるだけで分かるようになれば、検査のハードルはかなり下がります。
個人的には毎年の健康診断でもっと色々わかれば、安心だなーと思うので、タケダさんには是非がんばってほしいです