20 腸内細菌の短鎖脂肪酸が大腸のTreg細胞のホメオスタシスを調整する【マイルストーン論文③】

前回に引き続き、今回も腸内細菌の分野で「マイルストーン」と称されている論文*を読んでみたいと思います!

*Nature Milestonesの記事(https://media.nature.com/original/magazine-assets/d42859-019-00055-7/d42859-019-00055-7.pdf)を参考

今回は腸内の免疫についてのマイルストーン論文です

今回の論文

【論文タイトル】The microbial metabolites, short-chain fatty acids, regulate colonic Treg cell homeostasis

【著者】Smith et al.

【年】2013

【ジャーナル】Science

【リンク】The Microbial Metabolites, Short-Chain Fatty Acids, Regulate Colonic Treg Cell Homeostasis (science.org)

腸内の免疫は腸内細菌ありきで発達してきた

腸内の免疫機構は腸内細菌のそばで進化してきました。ヒトの腸内には常に腸内細菌が存在してきたと考えられているので、腸内の恒常性維持は腸内細菌なしで議論することはできません。実際に、腸内細菌のバランスが崩壊するとヒトは腸の炎症や疾患にかかることがあります。

Treg細胞は免疫抑制を司る細胞であり、腸内においてにも免疫機能調節で重要な役割を果たします。腸内細菌とTreg細胞が関わり合うことは示唆されていたものの、どのように二者がやりとりするかは分かっていませんでした。

スミスらは、この謎の解明に迫ったのです。

短鎖脂肪酸があるとTregが増える

スミスらが賢かったのは、まず腸内細菌たちがいったい宿主であるヒトに何を与えているのか推察した点です。無菌マウスと普通のマウスで腸内にある物質の違いを調べ、腸内細菌がいるマウスには腸内に短鎖脂肪酸が多いということを見つけ出します。

そこで、短鎖脂肪酸入りの水をマウスに与えたところマウス腸内においてTregが増加しました。また、プロピオン酸などの短鎖脂肪酸は複数あるTregの中でも、Fox3+IL10-producing Tregのみを増加させることが明らかとなりました。

短鎖脂肪酸はどうやってTregを増やすのか?

スミスらはTreg増加の要因として、短鎖脂肪酸がヒストンアセチラーゼ (HDAC) を阻害することでTreg発現が増加するのではないかと考察しました。そして、実際に短鎖脂肪酸があるとクラスIIaとIIbのHDACの発現が減少することが明らかとなりました。(このHDACがFox3+IL10-producing Tregの発現を抑制するということなんですかね)

つまり、短鎖脂肪酸はHDACによるTreg制御を解除するって感じなんですね~

所感

実験量がやばい😮

アメリカハーバード大学の論文ですし、テクニシャンをフル起動してそうですね。

物質の特定からメカニズム解明も行うなんで、すごいと思います。