17 マイクロバイオームにおける1細菌レベルの検出

今回はNature communicationからです。

【論文タイトル】High-throughput identification and quantification of single bacterial cells in the microbiota

【著者】Jin, J., Yamamoto, R., Tak

【年】February 2022

【ジャーナル】Nature Communication

【リンク】https://www.nature.com/articles/s41467-022-28426-1

16SrRNA遺伝子アンプリコンシーケンスの課題

マイクロバイオームには多くの個々の生物が大量に存在しています。

マイクロバイオームの機能を完全に理解するには、個々の細胞を特定する必要がありますが、現在行われている16SrRNA遺伝子アンプリコンシーケンスなどの技術では難しいです。

従来の手法は遺伝子コピー数をカウントすることしかできないので、マルチコピーの細菌の相対存在量が多く見積もられがちです。

BarBIQ とは?

Jinらは、この課題を解決するためにBarcoding Bacteria for Identification and Quantification (BarBIQ)というシーケンス手法を開発しました。

この手法がどのようにして一細胞をカウントするかというと、

  1. 一つの細菌細胞とバーコードとなる塩基配列(ひとつひとつ違う配列)をドロップレットに封じこめる
  2. ドロップ中で単一細胞からDNAを溶出し、バーコードをPCR反応で16SrRNA遺伝子くっつける
  3. バーコードを元に細菌数、16SrRNA遺伝子を元に細菌種を割り出す

という感じで ddPCR + バーコード配列を使ったシーケンスの組み合わせのようです。

一細胞につき一つのバーコードを使ってラベリングすことで、細胞を一個体レベルで識別するわけですね。

BarBIQの応用

著者らは、構築したBarBIQをマウスの微生物叢に適用し、810 cOTUを含む合計3.4×105の細菌細胞を定量しました。

すると、ビタミンA欠乏症に応じた細菌の空間的な配置が変化したことが明らかになったそうです。

著者らは、細胞ではなく16S rRNA遺伝子を定量化する従来の16S rRNA遺伝子アンプリコンシーケンシング法ではこのような解析は不可能であったと主張しています。

所感

アンプリコンシーケンスの解像度をさらに高くした手法という感じがしますね。

空間的な個体数の差は空間ごとにサンプリングすればアンプリコンシーケンスでも傾向は見えるんじゃ・・・?と思いましたが、シングルセルだからこそ局所性を見やすいのは確かですね。

もう一つ気になったのは、アンプリコンシーケンスと比べてどのくあい個体数の少ない細胞を検出できるようになったかということですね。従来のアンプリコンシーケンスだと、数の少ない16SrRNAは検出できなかったり解析の段階で切られてしまうため、ごくわずかに存在する菌の評価が難しいイメージでした。この手法だと本当に1~2細胞しか存在しない菌も検出できるのでしょうか?😶

それにしても、新しい実験手法を開発してくださる方々には頭があがりませんね。

実験者として開発者への感謝を忘れずにどんどん便利な手法は利用していきたいです!

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