18 マウスでヒトの腸内細菌を知る【マイルストーン論文①】

ふらふらっとNature系論文をネットサーフィンしていたら、Nature Milestonesの記事(https://media.nature.com/original/magazine-assets/d42859-019-00055-7/d42859-019-00055-7.pdf)にて以下のような見出しで紹介されている論文を見つけました

modern culturing efforts expand the culturable microbiota

(現代の培養に対する努力が、培養可能な微生物層を拡大した)

タイトルと一緒に引用されている論文は2011年と古いですが、気になりすぎる・・・

しかも、ジャーナルはまじめちゃんも大好きなPNAS・・・読みたい・・・

ということで、今回はマイルストーンと称される過去の研究論文を読もうと思います!

今回の論文

【論文タイトル】Extensive personal human gut microbiota culture collections characterized and manipulated in gnotobiotic mice

【著者】Goodman et al.

【年】2011

【ジャーナル】PNAS

【リンク】Extensive personal human gut microbiota culture collections characterized and manipulated in gnotobiotic mice | PNAS

少し想像と違う内容だったので少々理解にまごつきましたが、本論文で言おうとしているのは・・・

無菌マウスを使えば、ヒトの腸内細菌をだいたいは再現できる

そしてその腸内細菌層をin vitroで維持できる

ということかと思います。

無菌マウスでヒト腸内細菌を培養する

多くの微生物は、現在の培養技術では培養ができないと言われています。

以前も紹介しましたが、全微生物のうち私たちが単離できている菌は1%にも満たないという話もあります。これは、腸内細菌も例外ではありません。

実際に、Goodmanらがin vitroでGMM培地で培養を行った結果、腸内細菌を直接解析した場合と比較して約半数の菌種しか保存されていませんでした。

そこで彼らがとったのが、無菌環境で生育したマウスにヒト腸内細菌を接種して培養する という方法でした。

こうするとin vitroで培養したときとは異なり、9割近い菌種が維持されました。また、KEGGオーソロジー(KO)での菌の類似度もR2=0.95とかなり良くなったようです。

環境に応じた菌の動態も類似

Goodmanらは次に環境変化による腸内細菌の動態変化がどの程度ヒトとヒト腸内細菌移植マウスで一致するか調べました。具体的には食事を途中(62日スクリーニングしているうちの33-46日目)で高脂質・高多糖なものに変えています。

16SrRNA遺伝子解析の結果、ヒトとマウスで細菌層の変化の傾向が一致していたことが明らかになりました。

腸内細菌のライブラリー化

最後に著者らは、腸内細菌のクローンを保存する方法を考えました。

かなりの労働力が必要になるコロニーピックではなく、most probable number法(菌液を段階希釈して菌数を数える古典的な方法)を利用してクローン化を測りました。そして、予備検討で384ウェルの70%で無菌になるような希釈倍率だと384×10のトレイで~1000クローンほどできるようになったようです。

これでハイスループットに腸内細菌をライブラリー化できるようにしました。

所感

重要な研究だなと思います。

が、やはり気になるのは腸内細菌の再現度の解像度です。

無菌マウスで培養すると種レベルで9割維持されるというのには驚きましたが、欲を言えば株レベル・遺伝子レベルではどうだったのかも知りたい。

あと、維持できていない1割の菌も気になります。Fig.1CやFig2Dを見ると、一部の菌は消滅してしまっているようなのですが、これらの菌が腸内で重要な機能・役割を有する場合もあるかと思います。

なので、まあ「だいたい傾向がつかめます」くらいな気がしますね・・・

と10年前の偉業にガチツッコミしてしまいましたが、

アイデアは面白いし、ヒトじゃなくてマウスでできるとなれば実験ハードルがかなり下がるのでありがたいですよね!!

10年前にアンプリコンシーケンスなどをがっつり取り入れていたのもすごいですね。

引用数686回なのですが、どういう風に引用されているのかは気になります。

今どう発展しているのかも。まだまだ無知なので、今度読んでみよう・・・

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