31 マイクロプラスチックにおけるウイルスの多様性と潜在的な環境リスク
なかなか面白そうなタイトル
マイクロプラスチック (MPs) に生じる生態系の話ですね
今回の論文
【論文タイトル】Viral diversity and potential environmental risk in microplastic at watershed scale: Evidence from metagenomic analysis of plastisphere
【著者】Li et al.
【年】2022
【ジャーナル】Environment International
【リンク】Viral diversity and potential environmental risk in microplastic at watershed scale: Evidence from metagenomic analysis of plastisphere – ScienceDirect
マイクロプラスチック中のウイルス系統
この研究では中国北武湾北西部の中ベトナム国境に位置するBei-Lun川でサンプリングを行い、5種類のMPs(=ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、PE繊維(PFP)、PE繊維(PFP)、PE繊維PE(PFP))のウイルスを調べました。川の上流から河口まで集められた5種類のMPからは多様なウイルスが検出され、主にオウイルス科、シフォウイルス科、およびポドウイルス科に分類され、それぞれ総ウイルス存在量の32.8%、26.0%および8.32%を占めました。
MPsタイプ(PP、PE、PSおよびPFP)によってウイルスの種類が異なるといった現象は観察されませんでしたが、それぞれのMPsにしかみられないウイルスも存在しました。
また、PPで検出されたウイルスの種レベルの多様性(1372個)は、表層水(72個)や堆積物(84個)よりも著しく多く、PPが水生生態系におけるウイルスの重要なシンクであることが示唆されました。
MPのウイルスはどこから由来しているのか?
The fast expectation–maximization microbial source tracking method (FEAST)によって、河口MPsのウイルスが何から由来しているのかを調べました。その結果、ウイルス群集の構造を形成する主な発生源は下流のMPs(27.3%)であり、次いで上流のMPs(10.4%)であることがわかりました。一方、下水道管の排出口は1%未満であり、河口域のMPにおけるウイルス群集の主要な寄与者ではありませんでした。また、PE,PP,PFPでは下流が最も重要なウイルス供給源であった一方、PSとPFでは上流側のMPが最も重要なウイルス供給源であり、上流から河口までMPによって長距離輸送される可能性があることが示唆された。PPは、発生源不明の割合が75%以上と最も高く、多くのウイルスで明確な発生源がわからなかった。
異なるMPにおけるウイルスの潜在的な環境リスクの評価
まず、この論文ではリスクとして薬剤耐性遺伝子 (ARG) とウイルス因子(VFs) を標的としました。MP間でのARG量とVFs量を比較した結果、PPでVFsが最も多いことが明らかとなりました。また、ARGsはPEとPPで最も多く、PEでは下流において最もARGが濃縮されている一方で、PPでは下流で最もARGが濃く付着していることが判明しました。
また、著者らはMPごとにどのような機能遺伝子(=代謝系)が集まっているか調べました。その結果、ほかのMPと比較して、PPにおけるアラニン、アスパラギン酸、およびグルタミン酸代謝経路が多く存在する可能性が示されました。(うーん、まじめちゃん的にはRelative abundanceで比較してるこの解析の正当性は怪しいような気がするので、あまり深堀しません)
感想
なかなか興味深い内容でした!
マイクロプラスチックにそんなにウイルスが吸着しているのは意外でしたが、どういう状態なのでしょう?その辺をただよう砂や石ころと同じように核になってるだけなんじゃ?とかも思いましたが・・
PPで多様なウイルスが検出されたのはおもしろいですね。
物質との親和性が異なったりするのでしょうか?
PPで生態系構築がされやすいとなると、何かしらの技術に応用できそうです。