35 野生動物の腸内細菌 (Science, 2021年3月)

題名のとおり、本日はサイエンス誌からで野生動物の腸内細菌を調べた研究になります。

マイクロバイオームのメタゲノム解析にしては珍しく、最後の締めの図がタンパク質構造の模式図になっていたので興味をそそられました。では、読んでいきます。

今回の論文

【論文タイトル】Diversity and functional landscapes in the microbiota of animals in the wild

【著者】Levin et al.

【年】2021

【ジャーナル】Science

【リンク】Diversity and functional landscapes in the microbiota of animals in the wild (science.org)

184の野生動物からのサンプリング

まず、著者らは異なる184種の野生動物の糞便を採取しました。

(・・・184種!?しかも野生動物!?!?この論文の中で一番驚きました。サンプリングだけで数年経ってしまいそうですね)

Wild Biotechとワイツマン科学研究所いうイスラエルの研究機関の5つの研究チームによって、オーストラリア(クイーンズランド州)、フォークランド諸島、マダガスカル、ウガンダ、イスラエルに赴き哺乳類、爬虫類、脊椎動物、硬骨魚類から糞便をサンプリングしたそうです。

まだまだ知らない菌だらけ

回収した糞便をショットガンシーケンスに供し、解析により5,080 ゲノムを見出しました。そのうちなんと、1000ゲノムくらいは過去に報告のなかったゲノムだったそうです。

サンプル数と得られる新種ゲノムはまだまだ飽和しておらず、探せばまだまだ新しい微生物が見つかりそうです・・・(ごくり)

意外ではありませんが、各野生動物から見つかる細菌に大きな系統的偏りは認められなかったそうです。

似た表現型の動物は似た菌を持つ?

メタゲノムに対して機能アノテーションを行うと、近縁の野生動物は比較的類似した腸内細菌叢を有することが明らかとなりました。

細菌叢の多様性は草食動物、雑食動物、肉食動物の順に高いという結果となりました。

さらに、面白いことに表現型で細菌機能がクラスタリングできる傾向にあったようです。 (Fig 6) 例えば、草食動物、雑食動物、肉食動物はそれぞれ似たような機能を持つ菌を持っていましたし、社会性、寿命、体重で分けても同様の傾向が認められました。

(・・・これは腸内細菌と色々な表現型が相互作用する可能性を示唆しているのか・・?)

毒を代謝する新しい遺伝子の発見

野生動物は、病原菌が感染したり毒が含まれたりしたヒトには決して食べられないようなものを食べることができます。

著者らは、今回のメタゲノムサンプルから40個の新規プロテアーゼを発見しました。

これらのうち15個を大腸菌で発現し、生成酵素が毒を分解するか確かめたところ、1800通りのプロテアーゼvs毒素の組み合わせのうち、50の組み合わせで酵素活性を確認できたそうです。

(1800 ww この著者らはけっこうパワー系ですね)

所感

最初のサンプリングから酵素活性のin vitro実験までやっていて、あっぱれとしか言いようがありません。このメタゲノムは触ってみたらほかにも色々と面白いものが見つかりそうですね。個人的には、体重・寿命といった表現型が腸内細菌の機能性と関連している可能性があるという内容が大変興味深かったのですが、体重とか寿命とかは結局系統の近い動物が固まっていないかなーというのは少し気になります。

いや、でもあっぱれです。今後の研究にも期待です。

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