36 海洋の栄養状態をメタゲノムで調べる (Science, 2021年4月)

海洋全域の栄養ストレスパターンをゲノム明らかにするというなかなか壮大なテーマです。しかも、どうやら植物性プランクトンのみに焦点を当てるらしいです。今回はScience のReportからです。

今回の論文

【論文タイトル】Metagenomic analysis reveals global-scale patterns of ocean nutrient limitation

【著者】Ustick et al.

【年】2021

【ジャーナル】Science

【リンク】Metagenomic analysis reveals global-scale patterns of ocean nutrient limitation (science.org)

植物性プランクトンProchlorococcusの遺伝子獲得

貧栄養地域に最も多く存在する植物性プランクトンであるProchlorococcusは、遺伝子を獲得したり失うことによって低栄養環境に適応します。Prochlorococcusは成長が早く、個体数が多いため、ゲノムを構成する遺伝子と地域の栄養状態が密接に関係していることが知られています。

例えば、全てのProchlorococcusがpstABCS遺伝子を有し無期リンを同化しますが、リンが枯渇した状態になるとまた別のリン同化遺伝子をゲノムに取り込み(能動的ではない)、異なる形で環境に存在しているリンも取り込むようになります。Pの枯渇による強いストレス下では、細胞はアルカリホスファターゼphoAとphoXを獲得してdissolved organic P(DOP)を同化します。

この現象はリンの場合だけではなく、N、Feといった栄養源の場合にも類似した遺伝子獲得が行われると言われています。

栄養ストレスと遺伝子量の実験

著者らは、P、N、Fe濃度を人工的に調整することで、栄養ストレスを再現したProchlorococcus培養系を作製しました。そこでProchlorococcusを培養した結果、実際にストレスがない培養群と比較して、ストレスをかけた培養群では栄養ストレスに対応するための遺伝子がプールされました。

(選択圧をかけているので当たり前のように思いますが・・)

様々な海洋の栄養状態

合計1100程度の海洋表層メタゲノムサンプルを用いて、栄養ストレス遺伝子量を測定しました。その結果、Prochlorococcusゲノムは既知の生物地理学的パターンだけではなく、これまで認識されていなかった以下の栄養ストレスの地域も明らかにしました。(リンクFig1, 2)

(i)貧栄養地域に広く存在するNストレス

(ii)北大西洋、地中海、紅海におけるPストレス

(iii)赤道太平洋におけるFeストレス

さらに、南大西洋西部と北インド洋でPストレス適応域を見出しました。また、南太平洋東部の亜熱帯ジャイル、北大西洋と南大西洋の温帯域、アラビア海でも鉄ストレスに適応していることが判明しました。

所感

海洋の栄養状態をゲノムでモニタリングできるというのは面白いですね。これだけ特定の遺伝子に絞られているのであればqPCRも可能な気がしました。一方で、(的外れかもしれませんが)メタゲノムサンプリングより海水とってHPLCとかの方が簡単では・・・?とも思いましたが、それだと上手く栄養状態を判断できないのでしょうか。少なくとも栄養から生物が受ける影響は見えなくなりますが・・。まあこういう疑問は野暮なのかもしれません。

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