37 Th17細胞を調節する腸内細菌 (Nature, 2022年3月)

今回はNature誌からヘルパーT17細胞の分化を阻害する腸内細菌代謝物の話です。

最近まじめちゃんブログでも腸内細菌による胆汁酸 (BA; bile acid) 修飾がヒトとのやり取りに使われている話をしましたが (https://majime.info/2022/03/14/25-microbiome-review/)、今回の論文著者ら(ハーバード大学のBA研究者)は、新たに二次胆汁酸であるリトコール酸を3-oxoLCAに変換するヒト腸内細菌と対応する酵素、および腸内代謝物であるイソリトコール酸 (isoLCA) を同定しました。

今回の論文

【論文タイトル】Human gut bacteria produce ΤΗ17-modulating bile acid metabolites

【著者】Paik et al.

【年】2022

【ジャーナル】Nature

【リンク】https://www.nature.com/articles/s41586-022-04480-z

3-oxoLCA生産菌の同定

これまでの研究で、胆汁酸代謝物である3-オキソリトコール酸(3-oxoLCA)がTH17細胞の分化を阻害することが報告されてきました。3-oxoLCAは腸内細菌によって生産されることが示唆されてきましたが、3-oxoLCAを生産する細菌の正体や3-oxoLCAや他の免疫調節胆汁酸がヒトの炎症性病態と関連しているかは明らかになっていませんでした。

そこで著者らは、LCAを3-oxoLCAに変換する能力を有する菌をスクリーニングしました。15人の糞便のうち最も高い3-oxoLCAレベルを含んでいた2つの試料を使用し、腸内細菌の主要系統から990 の分離株を得ました。このうち、48時間後にLCAを3-oxoLCAに変換する細菌は12属238株でした。上位の生産者は、Gordonibacter pamelae P7-E3, Eggerthella lenta P7-G7, Raoultibacter massiliensis P7-A2, Collinsella intestinalis P8-C1, Adlercreutzia equolifaciens P11-C8 および Clostridium citroniae P2-B6 でした。これより、Actinobacteria および Firmicutes に属するヒト腸内細菌が 3-oxoLCA を産生することが示されました。

LCA添加培地で培養したE. lenta培養液上清は、Treg分化を変えずに、ナイーブCD4+ T細胞のTH17細胞への分化を阻害しました。これらのデータは、3-oxoLCAを産生するヒト腸内細菌がTH17細胞の分化を抑制することを示唆しました。

著者らはさらに、3-oxoLCA→isoLCAへの変換も同様の生合成経路で起こると予測しました。これを実証するために分離した990株を今度は3-oxoLCA添加培地で培養しました。その結果、266株が3-oxoLCAをisoLCAに変換し、54株が50%以上の変換率を示しました。その中でも、Lactobacillus rogosae P2-F2、Lachnospira pectinoschiza P2-A2、Catenibacterium mitsuokai P1-A4 は、80%以上の3-oxoLCAをisoLCAに変換しました。

3-oxoLCAとisoLCAをつくる酵素

次に、LCAを3-oxoLCAおよびisoLCAに変換する酵素 (HSDH, hydroxysteroid dehydrogenase) の同定を目指しました。E. lentaとR. gnavusのHSDH候補遺伝子20個を異種発現させ、LCAまたは3-oxoLCAとインキュベートすると、Ellen_0690とRumgna_02133はLCAを3-oxoLCAへ、Ellen_1325とRumgna_00694は3-oxoLCAをisoLCAへ変換することが明らかとなりました。グラム陰性のヒト腸内常在菌23 Bacteroides fragilisが強固なisoLCA産生菌であることも明らかになりました。B. fragilis の遺伝子BF3538とBF3932もisoLCAを生成する3β-HSDHとして同定されました。この2つの遺伝子のうち、BF3538を欠失させた場合のみ、B. fragilis培養液は3-oxoLCAをisoLCAに変換する能力を失いました。BF3538が3-oxoLCA→isoLCAを担う酵素の遺伝子のようですね。

同定された2つの3α-HSDH(Ellen_0690とEllen_0360)が成長中の細菌で機能するかどうかを調べるために、EggerthellaとGordonibacterの比較ゲノム解析を行いました。その結果、Ellen_0690のホモログを欠くE. lenta 3株(E. lenta Valencia, E. lenta 28B, E. lenta DSM15644)、Ellen_0360のホモログを欠くGordonibacter 2株(G. pamelaeae 3C, G. sp. 28C)を特定しました。E. lenta Valencia, E. lenta 28B, E. lenta DSM15644をLCAと培養しても3-oxoLCAとisoLCAは検出されませんでしたが、G. pamelaeae 3C, G. sp. 28CはLCAから3-oxoLCAとisoLCAを生産しました。

つまり、B. fragilisのBF3538、Ellen_0690が3-oxoLCAとisoLCAをつくる酵素と言えそうです。

(天然の欠損株を見つけるというわけですね。この比較ゲノムはHSDHが致死遺伝子ではなくてパンゲノムに含まれることも地味に言ってますね。HSDH有無で菌の生息域が異なるのかとかは気になるところです)

割愛しますが、著者らはin vivoでも腸内細菌叢がHSDH活性を有し、LCAを3-oxoLCAとisoLCAに変換することを確認しました。

IBDとの関連

最後に著者らは3-oxoLCAとisoLCAが何らかの疾患と関連性がないか調べました。すると、IBD患者の腸内では3-oxoLCAとisoLCAのレベルが著しく低下していることが明らかとなりました。そこで、IBD患者で発現していたTH17細胞/IL-17関連遺伝子を同定し、これらの遺伝子とLCA、3-oxoLCA、isoLCA、および他の2つのコントロールBAであるchenodeoxycholic acid(CDCA)、DCAとの相関を調べたところ、LCA、3-oxoLCA、isoLCA、CDCA、DCAとも相関が認められました。さらに、3α-および3β-HSDHに関連する微生物の特徴と腸内炎症中の3-oxoLCAおよびisoLCAとの関連性を調べた結果、E. lentaとR. gnavusの3α-HSDHホモログは、CDと潰瘍性大腸炎(UC)患者において著しく少なく、3β-HSDH相同体は生物学的異常状態のUC患者で少ないことが明らかとなりました。

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