23 腸内細菌がヒトを健康にする仕組みレビュー 【その2:短鎖脂肪酸】(GUT, 2022年2月publish)

その1からの続きです。マイクロバイオームがヒトの健康に関わるその仕組みのレビュー論文です。

今回の論文

【論文タイトル】Gut microbiome and health: mechanistic insights

【著者】Willem M de Vos et al.

【年】2022

【ジャーナル】GUT

【リンク】Gut microbiome and health: mechanistic insights | Gut (bmj.com)

さて、その1ではマイクロバイオームが影響を与えていると言われている疾患について述べてきましたが、その2ではどのように影響を与えているのかについてお話ししていこうと思います。

短鎖脂肪酸 (SCFA: short chain fatty acid)

人がエネルギーとして活用できない食物は、そうで吸収されず最終的に大腸に到着します。大腸では腸内細菌がそれらの物質を代謝して、短鎖脂肪酸などの物質に分解します。

(…昔のNatureの論文で、本来ヒトはワカメやノリを分解できないけど、それをよく食べる日本人はそれらを分解するための細菌を腸内に保持しているという論文を思い出しました)

要するに本来であれば人が使えないような物質を腸内細菌が利用できる形に変えてくれているというわけです。

SCFAは、腸内および肝臓、脂肪組織、筋肉、脳などの遠隔地における多数の代謝経路を制御しています。現在、これらの微生物代謝産物は、エネルギー恒常性の調節、グルコース/脂質代謝、炎症、さらには免疫や癌に至るまでの多数の生理作用に寄与することが知られています。

SCFAは、回腸末端と大腸に特異的に多く存在する腸内分泌L細胞の表面に発現する特定のGタンパク質共役型受容体に作用して、腸内ペプチドの分泌を刺激します。これらの受容体は、G protein-coupled receptor (GPR)43(またはfree fatty acid receptor 2(FFAR2))およびGPR41(またはFFAR3)と呼ばれ、さまざまな組織および細胞タイプ(例えば、脂肪細胞、免疫細胞)にも発現している。これらの受容体を欠くマウスは、SCFAsまたは特定のプレバイオティクスに曝露した後、GLP-1およびPYYの分泌が減少することが示されています。

SCFAの中でも酪酸 (butyrate) は、大腸細胞の増殖や腸管バリアの維持に不可欠なエネルギー源として知られています。しかし、近年、酪酸は大腸細胞とのコミュニケーションを通じて微生物環境にも強い影響を及ぼしていることが明らかとなりました。

腸管内腔に酸素が豊富に存在し上皮に向かってその濃度は徐々に低下していきますが、嫌気性菌にとってはこれが上皮の近傍に留まるための主要条件です。酸素があると死んでしまいますからね。

酪酸はミトコンドリアでのβ酸化を活性化して大腸内の嫌気性状態の制御に寄与していることが分かっています。酪酸は、大腸細胞の核内受容体ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体γ(PPARγ)を活性化することにより大腸細胞から管腔部への酸素の拡散を制限し、嫌気状態の維持に寄与しています。また、PPARγの活性化は、NO合成酵素をコードする遺伝子の発現を抑制し、それによって、病原性のある通性嫌気性菌(Enterobacteriaceae)の増殖に用いられる特定のエネルギー源であるNO産生、ひいては腸内の硝酸レベルを減少させます。(硝酸は多くの嫌気性細菌が呼吸するうえでかかせない物質なのです)

IBD、癌、肥満、糖尿病などの重度の腸内炎症を生じる疾患は、プロピオン酸や酪酸といったSCFAを産生する細菌の減少と相関することが知られています。例えば、F. prausnitzii、A. muciniphila, Dysosmobacter welbionisといった細菌が該当します。また、Anaerostipes属やAnaerobutyricum属は、酢酸の存在下でアセチルCoA経路を利用して乳酸から酪酸を生成します。小腸だけでなく、様々な細菌が乳酸を生成する大腸においても酪酸生成が可能です。

プロピオン酸や酪酸の他にコハク酸の影響も研究されています。コハク酸は、TCAサイクルの中間体としてよく知られていますが、細菌からの代謝産物でもあります。現在、コハク酸とインスリン抵抗性、肥満、炎症との間には、正・負両方の影響が報告されており、コハク酸の役割についてはまだ確実ではありませんが議論が続けられている状態です。

その3:ポリ多糖につづきます・・・

【腸内細菌がヒトを健康にする仕組みレビュー その1~7】はこちらからどうぞ!

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