26 腸内細菌がヒトを健康にする仕組みレビュー 【その5:アリル炭化水素受容体】(GUT, 2022年2月publish)

その4ではヒトが分泌する生理活性脂質とマイクロバイオームの関係を調べました。

今回はアリル炭化水素受容体 (AhR: aryl hydrocarbon receptor) とマイクロバイオームのつながりを見ていきます!

今回の論文

【論文タイトル】Gut microbiome and health: mechanistic insights

【著者】Willem M de Vos et al.

【年】2022

【ジャーナル】GUT

【リンク】Gut microbiome and health: mechanistic insights | Gut (bmj.com)

腸内細菌がAhR経路を活性化する

アリル炭化水素受容体 (AhR) は脊椎動物の細胞のいたるところで発現していて、代謝物質や細菌代謝物などのリガンドの結合によって活性化されます。AhRリガンドが結合すると、AhRは核内に移動し、結果として免疫と炎症作用に関連する様々な遺伝子を発現します。さらにAhR経路はエネルギー代謝やメタボリックシンドロームに関連するとも言われています。

多くの微生物代謝物が、このAhR経路を活性化するため腸内細菌叢とAhRの関係が注目されています。

AhRと腸内細菌叢の関係を示唆する先行研究を6つ紹介します↓

  • 乳酸菌の投与によってAhRリガンドが増加し、腸管バリアーが改善・肝脂肪症が軽減されるとともに代謝機能が改善される
  • 強力な抗炎症作用を持つインディゴはAhRリガンドであり、乳酸菌とともにインターロイキン(IL)-10およびIL-22を上方制御することで肥満や代謝障害を改善する
  • インドール-3-エタノール、インドール-3-ピルビン酸、インドール-3-アルデヒドなどの微生物トリプトファン代謝産物は、ミオシンIIAやエズリンなどのアピカルジャンクション複合体の強度に影響を与えて、腸上皮バリアを保護する
  • 腸内細菌叢が大きく損なわれているアルコール性肝疾患患者において、AhRリガンドの誘導と6-ホルミルインドロ(3,2-b)カルバゾール(Ficz)の投与がアルコール性肝疾患を改善する
  • Caspase recruitment domain family member 9−/−マウスは大腸炎にかかりやすく、その腸内細菌はトリプトファンを代謝することができないが(この細菌叢をWTに移植すると大腸炎になるので腸内細菌由来の現象であると考えられる)、大量のAhRリガンドを持つ乳酸菌で処理するとを投与すると大腸炎が改善される
  • 活動性セリアック病患者は、非セリアック病対照群と比較して腸内のAhRリガンド産生量が減少しており、高トリプトファン食・AhRリガンド産生乳酸菌・AhRリガンドFiczの処理によってグルテン暴露後の腸内病理が減少した

このような先行研究を元に考えると、

AhR経路は、「微生物」-「上皮バリア」-「代謝&免疫機能」をつなぐ経路である可能性が高いですね

今回もまたおもしろいですね~~。完全に腸内細菌叢ありきの経路って感じがします。が、マイクロバイオーム研究は全体的にそうなのですが、やはりエビデンスがちょっと少な目な感じがします。今回紹介した現象が色々な角度から複数回にわたり証明されることに期待します。

あ~まじめちゃんもこういう研究したい!

その6につづきます。

【腸内細菌がヒトを健康にする仕組みレビュー その1~7】はこちらからどうぞ!

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