27 腸内細菌がヒトを健康にする仕組みレビュー 【その6:腸内細菌と特別な分子】(GUT, 2022年2月publish)

その5ではアリル炭化水素受容体を見てきました。

今回は腸内細菌が腸内で分泌する特別な分子について見ていきます!

今回の論文

【論文タイトル】Gut microbiome and health: mechanistic insights

【著者】Willem M de Vos et al.

【年】2022

【ジャーナル】GUT

【リンク】Gut microbiome and health: mechanistic insights | Gut (bmj.com)

腸内細菌が分泌する特別な分子

これまで見てきたシグナル伝達物質は多くの腸内細菌によって生産される特異的でない物質でしたが、ある特定の細菌しか出さない特定の分子がヒトの細胞膜上の受容体に作用している場合もあるようです。

例えば、プロバイオティクスとして知られる乳酸菌 L. acidophilus NCFMはDC-SIGN受容体にシグナルを送るグリコシル化した大型のタンパク質 (SpaC) を生成します。ほかにも、Bifidobacterium属の繊毛に見られるTadタンパク質は大腸への定着性と上皮における増殖を促進するそうです。

E. coli のカゼイン溶解性プロテアーゼB(ClpB)はαメラノサイト刺激ホルモンの抗原模倣体で、血漿中のGLP-1とPYY産生の増加を促進します。(これは満腹感につながるらしい)ClpBタンパク質は、乳酸菌やビフィドバクテリアなど様々な細菌から分泌されることが知られていて、ClpBを産生するHafnia alveiがヒト試験で満腹感をある程度抑制することが判明しています。

(・・・ダイエット中のまじめちゃんはこの菌を飲んだ方がよさそうですね😂)

A. muciniphilaが持つタンパク質もシグナル伝達能を有するようです。例えば、P9と名付けられた84 kDaのタンパク質は経口投与した後にGLP-1を増加させたそうです。また別の50 kDaのタンパク質は TRAIL (tumour-necrosis-factor-related apoptosis-inducing ligand) 経路で LS174T 細胞の生存率を抑制することが明らかになりました。少し気になるのは、低温殺菌したA. muciniphila細胞がヒトおよびマウスモデルにおいて、生細胞と同等かそれ以上の効果を示したことです。この安定性は他の A. muciniphila のタンパク質には当てはまらない特性です。

まだ詳細はよくわかっていないようなのですが、がんの治療や肥満の治療に役立てられるタンパク質が同定されつつあるようです。もう一声!と思ってしまいますがスタートアップ感を楽しめるのも腸内細菌研究の良いところでしょうか・・・(笑)

【腸内細菌がヒトを健康にする仕組みレビュー その1~7】はこちらからどうぞ!

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